電話を切ってから、ふと、自分がお多福風邪でパンパンに腫れた顔を面白半分に写メに撮っていた事を思い出した。
私はニヤケながらその写メを伊織君に送信した。
すると直ぐに電話が掛って来て
『沙織ちゃん……最高』
電話の向こうで伊織君が笑いコケテいる。
『実物見たかったなぁ。知ってたらお見舞いに行ったのに』
「伊織君趣味ワルー。私、みんなに見られたくなかったから、お見舞い拒否したんだよ」
『でも、この写メ……小さい頃の沙織ちゃんみたいでかわいいよ』
(小さい頃の沙織ちゃんみたいでかわいいよ)
その言葉に私の体中の血液が顔に上りだした。
「そ……そう?」
『うん、かわいい』
「ありがとう……じゃ……切るね」
『うん、オヤスミ』
(かわいい)
私はその言葉が嬉しくてベッドの上で布団を被り込んだ。
あの、コンプレックスの塊だった小さい頃の自分を、かわいいと言ってくれるのはきっと、伊織君だけだ。
(かわいい)
急に……
無償に伊織君に会いたくなった。
私はベッドから飛び起きてベッド脇に置いてある時計を見るとまだ、八時前だった。