「そのまま、俺はそんなモヤモヤの状態で沙織ちゃんと離れて……中学に入ってバンドに誘われて……友達が出来て嬉しかったんだ」


伊織君は……急に肩を震わせて泣き始めた。その大きな瞳から涙が零れ落ちた。


でも、その目はじっと私を見据えている。


「小学生の時より急に背ものびて……バンドしていると俺の事なんて何も知らないくせにさ……好きだって女の子が言い寄って来るんだ」


唇を震わせ、伊織君の大きな目から涙がこぼれた。



「それで好きでも無い子に勝手に身体が反応して……身体重ねて……それを繰り返してさ……」


「……」


「俺の心はどこにあるんだって問いかけると、小さな身体の沙織ちゃんしか思い浮かばなくて……大人の女に身体は反応して、でも心は小さな沙織ちゃんを思い続けたままで……心と体がバラバラで……逃げ出したくなったけど……」


「い……伊織君」


「折角できた友達を失いたく無くて……そんな自分を隠したくてバンドに打ち込んで……」


この子は確かに伊織君だと思った。


昔のままのあの大人しい伊織君だった。


どんなに気勢を張っていても


どんなにかっこ良くても


あの頃の伊織君だった。