玄関の直ぐ隣にある和室に入って伊織君と二人ランドセルを投げ捨てて少しひんやりした畳の部屋に寝そべった。

そして、伊織君はポツリと言った。

「人を傷つける言葉なんてこの世に必要ないのに」

確かにそうだ。

「百害あって一利無しだよね」

私はそう言って笑った。

伊織君も笑った。

「そうだよね。一利もないよね。励ます言葉なら害はないけど」

「傷つける言葉は一利も無いよね」

伊織君は天井を見上げてそう言った。

そんな伊織君の横顔がとても可愛いと思った。

その日から私と伊織君はこのひみつ基地で二人切りで遊んだ。

ゲームを持ってきたり折り紙をしたりトランプをしたり私がたまに新体操でやる技を見せたり運動会のダンスの練習をしたり汗をかけばお風呂に入ったりしたが伊織君に一緒に入ろうと誘っても一度も入らなかったから

伊織君はお風呂が苦手なのかと思った。

でもそれ以外は仲良しだった。

伊織君と二人このひみつ基地で誰からも傷つけられる事なくいっぱい遊んでいっぱい笑った。