「こーんにちわーぁ!」
ドアをバッターンと開けて声をかける。
少々マヌケな声になったのは気付かないふりをした。
ここはミドリ出版の編集部。
今日は新作の最終打ち合わせ。
「永澤!うっせーんだよ!静かに開けろ!マヌケな声出しやがって!」
ワォ。編集長は本日ご機嫌斜め。怖い怖い。
「セイちゃん、随分ご機嫌斜めだね。フラれたの?」
「お前は随分ご機嫌だな。ついに彼氏出来たか?」
「リチャードのこと考えながら歩いてたらテンションあがっちゃって…テへ。」
「…は?リチャード?!おま…っ!まさか外国人の彼氏か?!」
「公開中の映画の主人公でしょ?『リチャード(32歳)の初恋』だっけ?
香月ちゃん、こんにちわ。いらっしゃい。こっちに座って?」
焦る編集長セイちゃんを横目に、冷静な事務員のハナちゃんがコーヒーを入れてくれた。
「ハナちゃん、ありがとー!こんにちわ!そして、当たり!」
勧められた席に座りながら挨拶していると、
眉毛が繋がりそうなほど眉間に皺を寄せたセイちゃんが向かいに座る。
「リチャードの初恋だぁ?なんだ、そのふざけたタイトルは。」
「最近流行ってるんですよ。編集長ご存知ないですか?」
「ご存知ねぇな。
…というか、お前また妄想しながら歩いてたんか。
やめろよ、お前。変質者でマジ捕まんぞ。」
「……はーい。」
「はい。素直でよろしい。
んで、新作の直しは出来たか?」
「できたよー。ちょっとハッスルしちゃって五ページ増えたけど。」
「まぁ五ページなら良いけどな。ちょっと確認するわ。」
そう言って、渡した原稿を読むセイちゃん。
ハナちゃんこと、花岡ちゃんがいれてくれたコーヒーを飲みながら、読み終わるのを待つ。
編集長のセイちゃんこと、山咲誠二。
私が小説を書き始めた時から担当してくれている。
当時は平社員だったけど、今や若くして文芸部門のトップ。
そして、元カレの兄ちゃん…という世間の狭さ。
昔の好(よしみ)ってやつで、
編集長になった今でも親しくさせてもらってる。
……昔は豪快で愉快な兄ちゃんって感じだったのに…
今は無精髭なんて生やしちゃって、渋いオジサマって感じ。
元カレと別れて…もう4年になるのか…。
時間が経つのは早いな…そりゃセイちゃんが渋いオジサマになるのも仕方ない。
私はあの時より…大人になれているんだろうか…。
ドアをバッターンと開けて声をかける。
少々マヌケな声になったのは気付かないふりをした。
ここはミドリ出版の編集部。
今日は新作の最終打ち合わせ。
「永澤!うっせーんだよ!静かに開けろ!マヌケな声出しやがって!」
ワォ。編集長は本日ご機嫌斜め。怖い怖い。
「セイちゃん、随分ご機嫌斜めだね。フラれたの?」
「お前は随分ご機嫌だな。ついに彼氏出来たか?」
「リチャードのこと考えながら歩いてたらテンションあがっちゃって…テへ。」
「…は?リチャード?!おま…っ!まさか外国人の彼氏か?!」
「公開中の映画の主人公でしょ?『リチャード(32歳)の初恋』だっけ?
香月ちゃん、こんにちわ。いらっしゃい。こっちに座って?」
焦る編集長セイちゃんを横目に、冷静な事務員のハナちゃんがコーヒーを入れてくれた。
「ハナちゃん、ありがとー!こんにちわ!そして、当たり!」
勧められた席に座りながら挨拶していると、
眉毛が繋がりそうなほど眉間に皺を寄せたセイちゃんが向かいに座る。
「リチャードの初恋だぁ?なんだ、そのふざけたタイトルは。」
「最近流行ってるんですよ。編集長ご存知ないですか?」
「ご存知ねぇな。
…というか、お前また妄想しながら歩いてたんか。
やめろよ、お前。変質者でマジ捕まんぞ。」
「……はーい。」
「はい。素直でよろしい。
んで、新作の直しは出来たか?」
「できたよー。ちょっとハッスルしちゃって五ページ増えたけど。」
「まぁ五ページなら良いけどな。ちょっと確認するわ。」
そう言って、渡した原稿を読むセイちゃん。
ハナちゃんこと、花岡ちゃんがいれてくれたコーヒーを飲みながら、読み終わるのを待つ。
編集長のセイちゃんこと、山咲誠二。
私が小説を書き始めた時から担当してくれている。
当時は平社員だったけど、今や若くして文芸部門のトップ。
そして、元カレの兄ちゃん…という世間の狭さ。
昔の好(よしみ)ってやつで、
編集長になった今でも親しくさせてもらってる。
……昔は豪快で愉快な兄ちゃんって感じだったのに…
今は無精髭なんて生やしちゃって、渋いオジサマって感じ。
元カレと別れて…もう4年になるのか…。
時間が経つのは早いな…そりゃセイちゃんが渋いオジサマになるのも仕方ない。
私はあの時より…大人になれているんだろうか…。