何も言えない私に困ったような笑顔の聖ちゃん。



「……やっぱり、だめですか?嫌になりました?」



首を振って否定する。



「びっ、くりした、だけ」



沈黙。


思考が停止した。

喋りたいのに、伝えたいのに声が出ない。



「今日は帰りましょうか」



吃驚して我に帰ると、聖ちゃんの笑顔。


あぁ、無理させちゃった。


ぎこちなくて、悲しげな笑顔。

聖ちゃんは私に背中を向けて歩き出した。

私の家に続く道。


こんなに傷つけたのに、送ろうとしてくれるの?


少しずつ聖ちゃんが遠退いていく。


どうしよう……。



『どうしようって何』

『あー出た。お姉ちゃんのどうしよう』



「っ、待って!」



叫んだ。

聖ちゃんが振り替えって、こっちに戻ってきた。



「どうしたんですか?具合とか……」

「初めてなの」



首を傾げられた。



「男の子と二人っきりで帰ったのも、こんなにどきどきするのも、デートとかこんな可愛い服着るのも初めてで、キスも…」



ここで少し息を吐いた。



「全部全部初めてで、戸惑って……考えてた言葉が全部とんじゃって。何て言えばいいか分からなかったけど、でも」



真っ直ぐ見る。

今まで溜めてた気持ち、今まであやふやにしてた気持ちを言うから、聞いて。



「私は柏木聖也くんが好きです」

「、」

「笑顔が好き。優しいところも面白いところも好きです。好きなところはいっぱいあるけど、嫌になるところなんてないです」



これが私の気持ちです。

私の想いです。

私に沢山の“初めて”をくれてありがとう。



「こんな私でも、付き合ってくれますか?」



「勿論です。こちらこそよろしくお願いします」



こうして、私と聖ちゃんは恋人になりました。



「返事遅くなってごめんね」

「本当ですよ。でも、今幸せです」

「うん。私も幸せ」