それからはいろんな店に行った。
あんまり買ってないけど楽しかった。
時間がたつのはあっという間で、今は誰もいない公園の前にいる。
「……川崎さんは覚えてないかもですけど」
と、聖ちゃんがゆっくり歩きながら呟いた。
「俺、中一の時に初めて川崎さんと会ったんです」
「えっと……ごめんなさい。何処で?」
本当に覚えてないです。
私のばか。
「夏前だと思うんですが、試合の帰りの汽車で。俺その時足怪我してて、あ。まぁ、それが原因で負けたんですけど」
と思い出したのか自虐的に笑っていた。
「悔しくて自分が許せなくて、先生も仲間も俺のせいじゃないって言ってくれたんです。でも、許せなかった」
その時の聖ちゃんの顔が悲痛で、私はこの表情に会ったことがあると思った。
相槌さえもうてなくて、どんな言葉もダメな気がして何も言えなかった。
「汽車の中で優しい人に会ったんです。1回、目があって、足元を見られた時に あ って思ったんです。もう一度目があうと微笑んでくれて、席を譲ってくれて。なんか、上手く言えないけど、びびびってきて」
風が優しく背中を撫でた。
この道を行くと私の家に着く。
聖ちゃんが小走りで私の目の前に来た。
「俺は川崎さんに一目惚れしたんです!でも、今は昔の想いなんかよりもっともっと好きなんです!」
聖ちゃんの顔が今までよりも赤くて、初めて告白されたときを思い出した。
胸の奥がきゅって何かに縛られるみたいで、足が震えた。
目線を足元に向けて落ち着かせる。
私も言いたいことがあるの。
意を決して上を向く。
「へ?」
―――――ちゅ
ほっぺたに柔らかい感触。
そっと手を置く。
んー……ん?
えっと、何かな?
暫く(といっても5秒もたってないかも)してから、その、きすされたかなと思った。
「柏木く」
「っ、俺、まだ中学生だけど……一緒に、川崎優奈さんと居たいんです」

