映画館の売店前で聖ちゃんが、
「飲み物とポップコーンはどうします?」
と、訊いてきたので飲み物だけ買うことにした。
「買ってきますね。コーラでしたよね」
「いいよ、そんな!」
「でも、」
「二人で並ぼう?」
時間もあるし、中学生に奢らせるわけにはいきません。
提案すれば渋々頷いてくれた。
気持ちだけで十分なんだよ。
指定された座席に座ると、すぐ近くに聖ちゃんも座った。
当たり前の事なんだけど、分かってたけど!
心臓が、うるさい。
顔赤かったらどうしよう。
心臓の音、聞こえてないよね。
もう隣見れない。
とか、心の中がうるさかった。
「………」
「………」
無言になるよね。
飲み物置こう。
手を伸ばしたら、聖ちゃんも伸ばしたらしく少し触れた。
反射的に顔をあげると目があった。
ぱちり。
遠くの方でアナウンスが入り、館内の電気が消えた。

