それから数分後、聖ちゃんが自転車に乗って猛スピードでやって来た。
「あ、聖ちゃん」
「っ……え?」
「部活、お疲れさま」
「あ、ありが、と、ございます」
呼吸が苦しいのか、途切れ途切れに話す。
背中を擦るとピクッと動いて、固まった。
……固まった?
「柏木くん大丈夫?」
「はい……も、平気です。遅れてすみません」
「大丈夫だよ。待つの嫌いじゃないし、急いで来てくれて嬉しかった」
「………」
背中から手を離すとまた固まった。
「柏木くん?」
「あ!……えっと、行きますか」
頷いて隣を歩く。
聖ちゃんの隣。
いつもの道。
いつもの私の帰り道。
「そういえば、明後日だね」
聖ちゃんを見ると顔をあげてくれた。
目があってきょとん顔。
あれー?
もしかして、違う日?
でも今週末って明後日だよね。
忘れて、るんですか……?
うん。泣きそう。
デートとは言えないので、お出掛けって答えた。
聖ちゃんのきょとん顔からみるみる赤面面。
そこからあわあわしだした。
「映画!映画ですよね。はい、明後日です!」
「よかったー」
泣きたい気持ちから一変。
かなり楽しみ。
音をつけるなら、ドキドキ、ワクワク、るんるんだ。
「すみません。ちょっと考え事して」
「うん。私楽しみにしてたから、忘れてるのかなってちょっと悲しかった」
「え!」
あ、もう着いちゃった。
もう少し家が遠かったらなぁ。
「じゃあ、またね。柏木くん」
「えぇ!?……あ、さよなら」
聖ちゃんの後ろ姿を見送って、家の中へ。
聖ちゃんが小さく呟いた言葉は聞こえなかった。
「そんなこと言われたら、勘違いします」

