前日同様、私は授業を全然聞いていない。
先生に申し訳ないくらい聞いてない。
うーん、恋愛って数学よりも難しい。
そんな偉そうなこと言えないんだけど。
やっぱり、漫画や小説みたいにうまくいかないんだなぁ。
始まってすらないよね。
付き合ってないし。
あれ?恋ってどこから始まるんだろ。
「川崎さん!」
「きゃあ!」
「きゃーじゃありません。今は何の時間ですか?」
「す、数学です」
「よろしい。では、この問題を解いてくださいね」
「、はい」
うぅ……皆の視線が痛い。
笑い声も聞こえるし、あーもう!
チョークをカツカツと響かせ、数字を並べる。
この前塾でやったところだから案外すらすら解ける。
塾万歳。
先生は「予習をやってきたところは褒めますが、授業もきちんと聞くように」と言っただけだった。

