知弥も今夜は特別な日だと心の中では思っている。


慎重に私の緊張の糸を解こうと努めていた。



ゆっくりと落とされる唇。部屋に響くリップ音。次第に激しくなり、布団の上に倒される。


私の上で組み敷かれる知弥の躰。


知弥の紫色の瞳にともる紅い光。


私の血を欲している。


外の満ちた月が妖たちに最大限の力を授ける。


知弥の指先が私の左耳元をなぞった。


「少しだけ…血を吸わせてくれ」


「いいけど…」


「サンキュー」