《完》BLOODMOON~あやかしの花嫁~

先祖が妖狐と言う雨音と閑音の力を借りて、『妖狐の国』と繋がる祠のある場所へと雨音が車を走らせる。



「お前の方が派手だな~滋弥」

「兄上よりも目立ちたかったのです」

俺よりも常に、優位に立とうとする滋弥の態度が何とも気に入らない。

猩紅色の直衣姿の滋弥。


直衣の色は既に、朱月を意識した色。躰からも焔のような炎のオーラが見え隠れしていた。



花奏を奪われた千本桜公園とはほど近い場所の森。


俺たちは祠に向かって、闇に包まれた森を歩いた。

草を踏みしめ、無き道をゆく。


雨音たちがいなければ、迷う漆黒の迷路。


「!?」


沼地に差し掛かった時、


「兄上」


滋弥が俺の足を止める。


滋弥の指差す方向には灯火の群集・蛍が小さな舞を見せ、俺たちを楽しませた。