* * *


「滋弥はそう簡単に花奏は渡さない!!」


「それは百も承知しております」


「・・・」


「前世は兄上に譲りましたが…今世は僕がいただきます!」


「俺はお前に譲られた憶えはない。お前から奪ったんだ…」


俺と滋弥の間には殺気立った冷たい空気が流れる。

俺の気に怯まず、真っ直ぐに滋弥は俺を睨み威嚇した。


滋弥は朱月と同化して、変わった。俺に遠慮なしに刃を振るい、自分のキモチをぶつけてくる。


俺の背中に隠れ、庇護をされていたクセに、恩を仇で返す弟。


頼もしいと思えば頼もしいが。食えないヤツとなった滋弥を少々、ウザいと感じていた。


「俺はお前と争うつもりなどない。花奏は諦めろ」


「・・・兄上こそ僕に花奏さんをください」


「俺は花奏を渡さない…」


こんな場所で、無駄な口を叩いてる猶予なんて俺たちにはないはず。