俺が知らず、滋貴の知る女。


噂では気の弱い妖たちと友達で、


邸宅は寂れてるが、垣根から飛び出た枝垂れ桜は見事な蕾をたくさんつけてるとか。



「ここか…」


俺は牛車の中から、物の怪の姫の邸宅を凝視する。


滋貴の言うとおり邸宅は陰の気で覆われていた。


我の知らない女に興味を持ち、俺は美しい白い月の見える夜、彼女の邸宅に侵入。


物の怪の姫と噂される女と言の葉を交わした。


見窄らしい衣であったが、声も顔も…俺の好み。俺が彼女の夫となり、後ろ盾を持てば、邸宅も彼女も華麗に生まれ変わる。


俺は桜の君と彼女を呼んだ。