こっちを見なよ


「ね、それって嫉妬?」

「へっ…?」

「俺が違う女と抱き合ってたと思ったから妬いちゃったんだ~。」
実に口調が楽しそう。私はなんだか悔しくなった。

「ち、違いますって!!」

「隠さなくていいって。そんなに思ってくれるなんて幸せだなー。」

「だから嫉妬じゃないですって!」

「素直じゃないりこも好きだよ。」
と言って、私の頬に、軽くキスをする。

「!!」

「真っ赤になって可愛い。」

「佐武さん!!」











あれからどれだけ経っただろう。
私はまだ全身の熱が冷めない。

繋がれた手からも新しい熱が生まれる。
帰るのはとても惜しいけど、もぅ見てるだけの日々は終わったのだと思うと心がぽかぽかする。

前を見たまま私の手をひく佐武さん。

暗がりに浮かぶ横顔を見つめていたら急に振り返った。

またからかわれるのではないかと思い、私は構える。

しかし振り返った彼はとても優しい顔をしていた。

「ねぇ、りこ?」

「はい?」

「これからいっぱい楽しいことをしよう。ケンカもするかもしれない。
でもね、俺はりこをずっと見ているから。」

「はい。」

「りこも、こっちを見なよ。」

私は返事として、彼を見つめて深く微笑んだ。



【end】