「佐武さん……。」
強引だけど、私を心配してくれた。
優しく私の髪を拭ってくれた。
そんな手は今は別の女性に伸ばされている。
私の頭を撫でてくれはしない。
あんな光景を見て、今更ながら佐武さんが好きなんだと気がつく。
そうじゃなかったら、こんなに悲しくない。大胆な行動が出来る彼女が羨ましいとも思わない。
彼女の行動を受け入れた佐武さんは今頃、私の事なんて頭の隅にもないのだろう。
とりあえず帰ろう。
私は流れてくる涙を無理矢理抑えて、歩を進めた。
トンッと足に何かが当たる。
それはサッカーボールだった。
