「宇李」
優しく名前を呼ばれると心が落ち着く
「今………奏時さんから………電話がありました」
「ん」
那由くんは静かに抱きしめ話を聞いてくれる
「私昔………」
ゴクッと生唾を飲み込み
「誘拐されたんです」
「…………は?」
目を閉じてゆっくりと過去を思い出す
私が7歳の時
「やだっ…………助けてっ!!」
母と2人暮らし
昼間1人で留守番していると急に男が家に侵入してきて私を連れ去った
「そこで助けてくれたのが今の父で刑事の奏時さんなんです」
その事件から1ヶ月後母は病気で他界
親戚もおらず1人だった私を家族として受け入れてくれたのが
奏時さん達だった
あれから10年
「私を誘拐した犯人が逮捕されたようです」
奏時さんは私が昔を思い出すことが怖くて伝えるか悩んだそうだけど私を安心させるために教えてくれた
「ですから私は1人になると未だに震えが止まらないんです。情けないですよね」
那由くんの抱きしめる力がよりいっそう強くなった