でも高木は
背は俺よりずっと低いし 童顔だし
すごくスタイルがイイ訳ではないし
優しいが どこか抜けていて
どちらかと言えば 妹だ。
だけど 一目惚れだったんだ。
美人より可愛い寄りの彼女から
優しく感じた 温かさは
その性格 心 想いが露になっていて
それを一目で感じ取った俺は
一瞬で深い恋に落ちた。
式中も 彼女から目が離せなかったし
クラス発表だって 気が気じゃなかったし
同じ教室内にいた彼女を
奇跡を感じながら見つめていると
瞬く間に目が合い
柄にもなく 頬を赤らめた。
でも次の日からは
俺の周りにも 彼女の周りにも
沢山の女子が寄り付くようになり
それからというもの
とてもじゃないが 近寄りがたかった。
いつの間にか出来た
自分を囲む人だかりには目もくれず
また高木の方に目をやると
そこには いつの間にか朝練から帰った
健吾の姿があった。
…ぅ、あいつ……。
思わず顔を濁らせると
周りにいた友達の 南 龍平(みなみ りょうへい)が
「んだょ、お前 ちゃんと聞いてんの?」
と 言い寄ってきた。
「…ぁあ? 聞いてるょ。
カフェの可愛い店員さんだろ?」
と なんとなく記憶に残る言葉を
テキトーに出した。
だけど すごくイライラしている。
高木が俺のならイイのに。
そしたら どんな男も
特に健吾なんて 絶対近付けさせない。
だが今では
目を見て話すことすら出来ない。


