「分かった…。
明後日の土曜日に 練習試合やるの。
アウェイじゃないから 見に来れるでしょ?」
奈穂が健吾に 近づいた。
大きな一歩で 健吾は急に恥ずかしくなり
俯いた。
さっきまで 何も思わなかったのに。
自分の靴が見える。
当たり前の事だけど
健吾はもう 気が気じゃなくって
目のやり所に困った時に見えたものだから
自分の足を 天使だとでもいうように
すがるように見つめた。
「…何?
もう降参しちゃうの?
自信なくした?
ねぇ、黙らないでよ、何か言って。」
奈穂が少し戸惑う。
言い過ぎたのか 心配になり
更に健吾に近づいた。
「…ごめん。 言い過ぎたよ。
ムキになっちゃうの、つい。
傷つけちゃった?」
健吾は やっとの思いで 顔をあげた。
「…別に 傷ついてはないけどさぁ。」
すると奈穂が
「何だぁ、ホントにどうしようって思った!」
と言って 掃除を始めた。


