恋花よ、咲け。





奈穂が腰を丸めて
「はぁー…。」なんて
深いため息をついた。


健吾は困った。


奈穂が沈んでいるのは 見て分かったし
何より その沈んだ奈穂を
笑顔にしたいと思ってしまったからだ。


「…まぁでも俺は
あと少しで マウンドに立てるし?

高木もそれなりに頑張れよ。」


少し小馬鹿にした言い方だったが
奈穂はにっと笑って 顔をあげた。


「言われなくても
佐々木になんか負けずに?
先にユニフォーム着てやるよ。」


奈穂が勢い良く立ち上がり
健吾を上から見下ろした。


「はぃはぃはぃはぃはぃ!!

口でなら何ぼでも言えるからねぇ?」


健吾も負けてられんと
勢い良く立ち上がり
持っていたチリトリとミニほうきを
床に放り投げた。