恋花よ、咲け。





弘也は一人
体育館棟の2階 体育館の入り口付近にある
物置部屋に向かっていた。


奈穂と健吾が
2人で教室を出たのを確認してから
少し遅れて 教室を出た。


「…広報委員なのに
物置部屋に集合なんて
何させられるんだろう…。」


弘也がボソッとこぼした。


「…物置部屋だからァ……。

んー 物の整理じゃない?」


あまりにいきなり
声が聞こえたから 弘也はこけそうになった。


「やだ、そんなにビックリする事?」


振り返ると
同じ委員会の 飯野 咲来(いいの さくら)
が立っていた。


「…何、どうしたの?」


最も 見た目としては
弘也の大嫌いなタイプであった。


「だって、同じ委員会だから
一緒に行こうと思って。

…嫌?」


なんだ、性格も大したことが無い。


相手を極限まで追い込んで
イイ返事を待とうとする。


嫌らしい性格だなぁ。


…俺の本性も知らないで。


「別に、嫌なんて一言も。

物置部屋って
体育館棟の2階 体育館入り口前…
で イイんだょね?」


「うん、そうだよぉ。 いこっか。」


弘也が視線を落とすと
咲来と目があった。


咲来は ニコッと笑ったが
奈穂に勝てる要素など
たったの一つもなく
より一層 奈穂が愛惜しく感じた。