恋花よ、咲け。





…緊張しているのは 俺だけ。


その言葉が 頭中で響き渡る。


…分かってる、そんな事。


それでも諦められないんだから
仕方ないじゃないか。


自分をきつく縛り付ける。


健吾はいつも
"自分が我慢する"ということが
一番丸く 簡単に終わる
と思っていた。


…いつだってそれでイイ。


奈穂は なかなか返事をくれない
健吾を振り返り
「何で?」と言った。


「…あぁ。
弘也はね 強豪クラブチームに
スカウトされてね。

実は 俺ら
中学の県大会で 準優勝したんだ。

で、県の決勝戦にもなると
スカウトマンがうじゃうじゃいてね

大体 県大会で活躍した人は
そのスカウトマンのチームに
進んでいくんだよ。

…弘也も その決勝で勝ったチームの
ほとんどの卒業生が進む
"侍"っつーチームにスカウトされて
そこに入ったんだ。

…俺は この高校の野球部に入りたくて
ここに来たんだ。

だから、スカウトさ全部断ったんだ。」