恋花よ、咲け。





「それで俺は 心から思ったんだ。

あんな素晴らしく出来た所で
弘也はずっと投げてきた。

…だったら
ものの一度くらい
俺にくれてもイイじゃないかって。

…勿論
あの試合で弘也は
全部投げきりたかったとは
思うんだけどね。」


二人は 体育館の前で立ち止まった。


「…ぁ ごめん長々と。」


健吾が目尻を下げて言う。


「ううん。
なんだか とってもいい話。

…仲は 良いんだよね?」


「勿論。 親友だからね。」


奈穂は 健吾の話と言うよりも
弘也の話として聞いていた。


「…弘也 野球上手いのに
野球部じゃないよね?

…なんでなの?」


健吾と奈穂が
同時に体育館のドアに手をかけて
二人の手がぶつかった。


「…あ、ごめんね。」


奈穂は 何でもなかったように
普通に体育館へと足を進めていった。


健吾はというと
緊張して そこから動くのに
少し時間がかかった。