「それに 弘也も巻き込まれた…みたいな。
…でもね 弘也の方が
ずっと上手いんだよ。」
健吾の柔らかな表情が
急にグッと引き締まる。
「…父さんは
俺に見込んでいたのに
すぐに弘也に夢中になった。
俺がまだ
フライを怖がっていた頃
弘也はすでに
塁間に届く球を投げていたんだ。
父さんは
俺も弘也も ピッチャーに育てるって
考えていたんだ。
…その中で
弘也が先に肩を鍛えだすとなると
かなり遅れるんだよ。
…俺はまだ
ボールにも慣れていなかったっていうのにね…。
それで俺は
好きでもなかった野球を
ひたすらやり続けたんだよ。
弘也に勝って
父さんに誉めてもらうために。」


