恋花よ、咲け。





初めは何か分からなかった。


大峯 潤であることは確かだ。


「……何が?」


大峯は 迷いなく俺の携帯を取った。


「…奈穂は 真っ直ぐだよ。
佐々木に取られたくないなら
自分でちゃんと伝えてきなよ。

そういう汚いことしないで
ダサいことしてきなよ。

好きなんでしょ?」


あまりよく話したことがない大峯に
ほとんどの自分を知られていたのが
酷く怖かった。


だが 何故か心地よかった。


彼女はきっと
ずっと俺が高木を好きだって 知ってたんだな。


「……お前 めちゃ怖えぇー。」


「それ 佐々木にも言われた!」


明るく笑う大峯は
俺に勇気と 元気と 自信と 希望をくれた。


「ありがとう。」


携帯を返してもらうのも忘れ
軽く頭を下げると 教室を出た。


『頑張れっっ。』


最後に大峯が 俺の背中に言った気がする。


だが 頭には高木のコトだけで
すれ違う人の顔も 降り始めた雪も
落とした生徒手帳も 踏んだプリントも
何もかも そこには存在しなかった。