手を振って 大峯より先に
校門をくぐってから ふと思う。
「バス停まで送るのが普通だったかな。」
ぱっと灯った電灯に 更にそう思う。
なんて紳士的さに欠けてるんだ。
握り締めたメモに あまりに夢中で
思い付きさえしなかった。
「しまったな…。」
いくら相手に気がなくても
それくらいは言わなきゃいけなかった。
…いつかそれが
高木になるかもしれないのだから。
淡い期待から始まり
いつしか大きな決意へと変わっていった。
守りたい何か 愛したい何かは
今はまだ俺の手には無いけれど
いつか必ず 自分だけのものにしてやるさ。
こんなにも揺るぎない想いは 初めてだ。
「ぅげー…。」
完全な帰宅ラッシュに遭遇し
満員電車に 無理矢理体を押し込める。
あぁ、高木の声 早く聞きたいな。
高鳴る胸を押さえ 家路に着いた。


