恋花よ、咲け。





大峯がゆっくり微笑んだ。


「…大峯さ……。」


俺は思う。


それは違うよ、間違ってるよ、大峯。


「間違ってるよ。」


少し驚いたように 目を見開くと
「…え?」と小さく言った。


「…例えば 運命は最初から決まってるとする。
そして人はその運命を変えようとする。
どうしても好きな人がいるから。

そしたらそれは 努力じゃなくて
本能なんじゃないのか。
何かを守るために 愛すために
それを手にいれたいと思う。
それは 俺らが元から持ってる本能だ。

努力しようと思う前に
俺たちは本能で それをしているんだよ。

諦めるのは そいつが弱いやつだからだ。
俺は弱くない。 貫き通すさ。
必ず高木を手にいれるよ。」


驚くほどに すらすらと口から流れる言葉。


「……そっか。」


と 大峯がこぼした。


「私の出る幕は無かったね。
…てっきり もう諦める気かと思ってた。」


ははっと笑ってから 大峯が
何やらメモにペンを走らせた。


そしてそれを俺に差し出す。


とりあえず その紙を受けとると
「奈穂の番号だから。」と言って
にかっと悪戯っぽく笑う。