だけどそれは現実ではなく虚しく俺の願いへと変わった。

どうして父さんなんだよ。

そして手術室の前まで来ると、泣きはらした目に今にも死にそうな顔で父さんの無事を祈っている母さんとそんな母さんを支えている兄貴の姿があった。

そんな光景を見るとこれは夢ではなく現実なんだと突きつけられる。

「優也…。」

兄貴はそうつぶやいてこっちに向かってきた。

そしてここまで連れて来てくれた看護師さんがそっと去って行った。

「兄貴…。父さんは…」

俺は消え入りそうな声で問いかけた。

「向こうで話そう。」

そう言った兄貴はとても冷静で、俺よりもはるかに大人に見えた。