アゲハ~約束~

 彼女がそういうと、二人はそろって「まさか!」とそれを否定した。



「約束したじゃない・・・必ず迎えに来るって・・・!」

「だって、ずっと、連絡一つよこさずに・・・一体どこにいたっていうのよ!」



「私たち・・・ドイツにいたのよ。」



「ドイツ?」

「そう。お父さんが、難しい病気にかかってね・・・臓器移植を受けるために、ドイツにいたの。」



 幼いあなたには、説明してもわからないだろうから説明できなかったわ。

 うっすらと涙を浮かべた彼女は、けれど、再会の喜びに笑みを浮かべている。



「ようやくドナーが見つかって、手術を受けられて・・・そしてようやく、アゲハを迎えに来ることが出来た。」

「・・・じゃ・・・じゃぁ・・・」



 ――――そう。



 最初から、なかったんだ。







 果たされなかった約束なんて。