出会いは高校一年の春でした











ま、迷った…



高校生活が始まってもない入学式でいきなり迷子になってしまった…



母さんはさっさとどっか行っちゃうし…



大体なんでこんな複雑な地形なわけ!?


体育館がどれかわかんないような作りしてるし!



「最悪…」



中学の友達はみんな違う高校に行って、この学校にはあまり仲のよくなかった子達がいて、クラスにもまだ溶け込めなくて…



なんだか鼻のつけねがツーンとなってきた



「とにかく体育館に行かなきゃ…」


足を踏み出した瞬間、肩から衝撃が走る



「いってぇな!」


チッと舌打ちをする(おそらく先輩)男の人



「すいませんっ!!」


急いで謝った
恥ずかしさと恐怖で死にたかった



その人は連れの人と校舎に向かって帰っていった


「あんなブスにぶつかられても嬉しくねぇっての」


「ははっ言えてる!」



…聞こえてますが?
確かに黒髪ロングに黒ぶち眼鏡じゃ地味だろうけど、ブスって…


はぁ…
もう帰りたい



「もしかして一年生?」


「!!」


ビクッと体が反応する


そこにいたのは黒い短髪に黒い眼鏡のスーツ姿の…先生なんだろうか…?


「よかった。この学校、構造複雑やから絶対迷ってる子いるって思ってな」


お、大阪の人なのかな


「は、はい体育館ってどこですか?」


「こっちこっち」


ニカッと笑うとくるりと背を向け歩きだす



しばらくすると目的地に着いた
もう大方の生徒が集まっているのか先生たちが怒鳴ったり注意する声が聞こえる



「あの、ありがとうございました」



「何組?」


「へ?」


「クラス。」


「あ、えと、五組です」



「進学クラスかぁ…これから大変やろうけどがんばろな」


「はい」



先生はじゃ、と言うとどこかへ行ってしまった



いい先生だな、と思った



あ、名前聞くの忘れた…



そうこう考えているとチャイムが鳴った



私は急いで席に着いた



私の名前は篠ノ芽朱日奈



あなたの名前はなんですか?