「てか何で会いにいったん?罠かも思わんかったん?」


俺は正直そんな状態で、響輔がイチの元に駆けつけたことが意外だった。


あいつの行動を探るつもりで行ったかと思ったけど、どうやらそのつもりでもなさそうだ。


そもそもこいつがそんな面倒なことをするやつでもない。


「それは一瞬思いましたけど、でもあのときの様子は演技でもなさそうやったし。


電話口で泣かれてみてください。俺うまく宥められんし、とりあえず会った方が早いかな思いまして」


まぁ、俺も響輔も女の涙にはとことん弱い。


喧嘩したりして相手が泣くと、とたんにオロオロ。


どうしていいのか分からなくなるのだ。


ってか、イチが泣いてた??あの気の強そうな女が……何か信じられん。


「相手は女優やで?お前を騙すぐらい容易いことやろ」


俺はあきれ返って腕を組んだ。


「騙してどないする言うんですか。今俺を殺しても一結には何の得もあらへん」


「まぁそうかもしれへんけど」


何か納得のいかないものを抱えて俺は唸った。でもそれ以上考えてもあいつの真理なんて分かんねぇし。


「ほんまにその夜何もなかったん?仮にも深夜のホテルで若い男女が一緒やったんやで?」


俺は気になることを聞いてみた。


「一結と?あー、ないない。絶対あらへんわ」


響輔はうんざりしたように手を振った。


響輔がきっぱりとこう言うからには、本当に何もなかったんだろう。


それどころか…


三日経った今日、朝からイチの電話攻撃にやられて、響輔は会わざるを得ない状態に追い込まれたらしい。





「あの女!彼氏でも友達でもない男を、さんざん振り回しやがって!!信じられへん」






響輔が唸るように言うとわなわなと両手を震わせて、眉間に皺を寄せる。


響輔……怖えぇよ。