イチが響輔の番号を手に入れたきっかけは、花火大会の前日まで遡る。
響輔の説明では、この日従兄弟の結婚式で大阪に帰った。響輔の従兄弟ってのは俺も数回会ったことある。
響輔の従兄弟だからやっぱり極道一家で、鷹雄組の分家に当たる。
意地悪で俺様な兄ちゃんたちに囲まれて育った俺は、ヤクザだってのに優しくて気の良い響輔の従兄弟になついていた。
結婚式の話を聞いたときは俺も響輔にくっついて行きたかったけど、俺たち二人が一緒にここを抜けるわけにはいかず、結局響輔だけ戻ったってわけだ。
と、まぁその話はそこまでで、
どうやら帰りの新幹線で偶然にもイチに会ったらしい。
そのときに強引に番号を交換させられたとか。
イチのヤツも何を考えてんだよ。
鴇田を騙して龍崎組に奇襲をけしかけた張本人のくせに。
そして花火大会の日に、その鴇田が事故に遭ったことを今はじめて知った。
「事故!?何で?」
「ただの事故ですよ。相手も極道とは何の関係もない大学生みたいやし。大きな怪我もなく、順調に回復してるみたいです」
「そうなん!?」
寝耳に水。とはまさにこのことを言うんだろうな。
しかも驚くべきことに、朔羅もその事実を知っていたらしい。
「あいつそんなこと一言も……」
ってそれどころじゃなかったのか…
とまぁ呼び出されて会いに行き、もちろんその晩は何事もなく響輔は帰ってきたらしい。



