手のひらに乗せたケータイは数秒の間鳴り響いていたが、どうするべきか悩んでいるうちに鳴り止んだ。
「………」無言で響輔の方を見ると、
「ストーカー女が」と響輔が忌々しそうに唸るような声を布団の中であげた。
俺はメモリで“リコさん”を探すと、川上に電話を掛けた。
『…は、はい!!』
すぐに相手は電話口に出た。緊張しているのか声が上ずっている。
まさか響輔から電話が来ると思ってなかったのだろう。だが、まさか電話の相手が俺だとも思ってないだろう。
「もっし~♪お・れ★」
ふざけて言うと、
『え!?…も、もしかして龍崎くん!?』と川上はすぐに理解して、だけど残念そうに声のトーンを落とした。
「悪かったな、響輔じゃなくて。ってかアイツ今取り込み中。怪我とかじゃないから安心しな。
悪いけど、しばらくこのケータイ繋がらなくなるけど、落ち着いたらまたアイツから掛けさせるから。
緊急の場合は朔羅に掛けて??」
短く用件を伝えると、俺は電源ごと切ってやった。
「ほらよ。電源切ったから、これで着信に悩まされることはないやろ」
そっけなく言ってケータイを放り投げると、布団の中から腕を出した響輔がしっかりとキャッチした。
「電源……なるほど…そこまで思いつかなんだ…」
「お前頭良いくせに、何でこんなこと思いつかなかったん?そーいや、昔っからどっか抜けたところがあるヤツやったけど…」
「おおきに。もうこれで悩まされることはなくなりました。ほな」
響輔はさっきの落ち込みようから一転、いつもの無表情に戻って布団から起き出すと、
スタスタと部屋を出て行こうとした。
「待て!待て待て待て!待てや」
慌てて響輔のシャツの裾を引っ張ると、
「もう解決したさかい、戒さんには用があらへん。(←普通にヒドイ)おやすみなさい」
「待て!お前、イチとはどないな関係なんや!」
俺が凄むと、響輔はちょっと目をまばたいた。
「響ちゃん♪夜はまだ長いさかい、
今夜は寝かせへんで♪」
にやり、と笑って響輔の肩に手を置くと響輔はたじろいだように顎をひいた。



