「気色悪いねん!新手のイヤガラセかっ!!」
「頼んます!今夜だけ泊めて!独りにせんといて!」
俺の蹴りにもちっとも怯んだ様子を見せずに、響輔が切羽詰まった表情で俺の脚に縋ってくる。
嫌がらせじゃなく…ってかこいつがこんな嫌がらせしてきたこともないし、本気で困っているようだ。
どうしちまったんだよ!お前は!!
「意味分かんねぇし!ってか俺にくっつくな!」
そんなやり取りをしている最中だった。
~♪
さっきの騒動でポケットから落ちたであろう床に転がった響輔のケータイが、着メロを鳴らした。
ビクッ!
響輔が肩を大きく揺らし、
「こんなものっ!」
そう言って俺にケータイを投げつけてくる。
バシッ!
ケータイが俺の体に当たり、「いてっ!」俺は顔をしかめた。
「何すんだよ!!」
着メロはすぐに鳴り止んだ。どうやらメール受信の音だったらしい。
俺がケータイを拾い上げる隙に、響輔はまたも俺の布団にもぐりこんでいた。
「ったく!何やって言うんだよ!」
って言うか響輔が壊れた……
こんなこと以前にもあったな。だいぶ前の話だけど。
確かあれはルイ(俺の兄貴で次男)の彼女に追い掛け回されて、こいつはストレスで一ヶ月で五キロも痩せた。ルイのヤツはあのとき荒れて俺も被害を被ったわけだが。
あのときの状態とそっくりだ。
「しくしくしく…」
布団の中からくぐもった泣き声が聞こえて、ってか泣いてはいないだろうけど、でも相当キてるな。
「その女幽霊のすすり泣きみてぇな声は止めろや」
呆れてケータイを見下ろすと、サブディスプレイには
“メール受信:リコさん”になっていた。
「おい、川上からメールやけど、あいつと何かあったの?」
川上が響輔にここまでダメージを与える女にゃ思えないけど、響輔のこの態度はちょっと異常だ。



