女に、それもあんな風にやり込められるなんざ、はじめてだ。


ちょっとショック。


いや、その気になりゃあの女を黙らせることぐらい簡単だったが、何せ相手は女だ。


俺は女に対して手を挙げない主義なんだ。(Cherry Blossom 第一部では、朔羅と拳を交えたけど。ってか俺は脚だったな。

どっちでもいいケド。あの場合はちょっとばかり事情が違ったし、朔羅の力量をこの体で感じてみたかったてのがあった)


とまぁ、俺の主義を語るのはここまでにして、


龍崎家に帰って、やりかけだった夕食の準備をマサさんとして、その後は相変わらず龍崎組の連中と賑やかな食事をした。


川上は少し前に帰っていき、朔羅は相変わらず少しだけ俯いて、黙々と食事をしている。


時折何か言いたげに顔を上げるものの、結局何か言葉を発することなくまた俯いてしまう。


遠くの方で響輔も……ってかこっちは違った意味でどんよりと負のオーラを背負いながら、黙って箸を進めている。


どいつもこいつも…


と思ったが、俺だってさっきの衝撃で少しばかり食欲が落ちていた。


あの女―――彩芽さんが纏っていたあの微香が、まだ鼻の奥でくすぶっているようで、


食材の味すら分からない。


「…ごちそうさま」


自分の分を平らげると、俺は手を合わせた。


「え!戒!!お代わりは!?」


と俺の茶碗を覗き込んで朔羅が目を丸める。


「ちょっと食欲ないんだ」苦笑を浮かべて腹を押さえると、


「いつも三杯は食う戒が、今日は一杯!?…どーしたんだよお前…」


いつものように心配そうに俺を見上げてくるが、目が合うとまたも朔羅は視線を逸らした。


「何だぁ?変なもんでも食ったかぁ?」


ユズさんがちっとも心配してなさそうな笑い声で聞いてきて、


「いえ…恋わずらいです」


そう答えてみた。


俺の答えに、


「「「―――…ああ…」」」


全員の視線が響輔に注がれる。