台所から顔を出したマサはあたしとリコを見ると、不思議そうに目をまばたいた。
「お嬢!どうされたんですか?あ、もしかしてリコさんがお帰りになるんですかい?」
「…いや、おめぇに聞きたいことがあったんだけどよ…」
ピンポーン
二回目のインターホンが鳴り、あたしたちの会話は中断された。
「ちょっと待っててくだせぇ。へい!へーい!!」
マサが慌しく玄関に向かい、あたしはその様子をそっと影から覗くことにした。
誰だろう……
うちに客なんて珍しい。
見るからに極道一家のうちに新聞勧誘をしてくるヤツや、命知らずな悪徳セールスマンも居ない。
ここに訪れてくるのは、用がある客だけだ。
ガラッ
マサが古めかしい引き戸を開けて、玄関口の外に立っていたのは―――
和服姿の美人。
―――彩芽さんだった。



