コーチはあたしらが見学してることに気付かず、女子の素振りを文字通り手取り足取り教えている。


「腕の振りが甘い。脇をかためて」


なんて言いながらさりげな~く肩や腰をタッチ。


さわさわさわ…


むぅう。触り方がなんかやらしい…


って見えるのはあたしだけなのか。


部活の女子は気にした様子ではなく素振りを繰り返している。


あたしはフェンスにかじりついてその様子を眺めていたが、


すぐ隣で同じように練習を眺めていたキョウスケも


「なんか好きになれないタイプですね」と眉をしかめている。


「あれだったら堂々としかけてくる大狼さんの方がまだましって言うか」


「お前も変態タイガと比べんなよ」


「下心が隠せてないって言いたいんですよ。あの人みたいにオープン過ぎても困りますが」


キョウスケがあたしの方を見てきたときだった。


ポーン…


あたしたちの頭上を黄色い小さなボールが通り越して、コロコロっと背後で転がった。


「すみませ~ん!」


ウェア姿の女子二人が手を振って走ってくる。


キョウスケは転がったボールを拾い上げ、


「ちょうど良かった。聞き込み、しましょう」


とあたしに笑いかけてくる。