「なんかドラッグストア行く気分でもなくなっちゃったな」


あたしが話題を変えるように言うと、


「あ、じゃぁお茶でも」と新垣 エリナがぎこちなく駅前のカフェを指差す。


茶もいいけど、今はこの駅周辺でうろついていたくないと言うか…


それは新垣 エリナも同じ意見だったのか、指し示した手をすぐに引っ込めて俯いた。


「茶もいいけど、千里のお見舞い行かない?あいつ今入院してんの。


マドンナが見舞いに来たって知ったらあいつ喜ぶだろうからさー。


あ、千里って一ノ瀬 千里のことだけど、知ってる?」


早口に聞くと、


「うん、知ってるよ。アキレス腱断裂、大変そうだよね」とぎこちなく笑う。


そう言えば肝試し、新垣 エリナも一緒だったしな。


「じゃ決まり。行こうぜ!♪」


あたしが駅を指差すと、新垣 エリナは安心したように頬を緩めた。


電車の中でも新垣 エリナはあたしの手を繋いだまま。


でも周りから変な目で見られることはないようだ。女の子同士だし??


リコのときもそうだったよな。


男同士だと気持ち悪いけどなー。


とちょっと考えていると、


ガクリ…


隣に座ったスーツ姿の男の人の頭があたしの肩に下りて来て、あたしはびっくり。


目を剥いていると、男の人は慌てて起き上がった。


どうやら熟睡してたみたいだ。


お疲れのようだな、サラリーマン。ご苦労なこって。


「す、すみません!」


こっちが申し訳なく思うぐらいその人は慌てて手を振って腰を折る。


見たらかなりのイケメンだった。


「いえ…」


…って…ん??


このスーツの美青年…どこかで…


えっと前はスーツじゃなくて私服だったけど。


どこでだ?


目をぱちぱちさせて考えていると、美青年もちょっと考えるように首を傾けている。


「「…………」」


二人して沈黙して、そして


「「こないだの!」」


あたしと美青年が同時に指差し、あたしたちはまたも目をぱちぱち。





「あんた、タチバナと一緒に居たおにーさん!」

「シュウがナンパしてた女の子!」





二人の声が揃ってあたしたちは同じタイミングで口を噤んだ。