「りゅ…龍崎さん!」
新垣 エリナが息を切らしながらあたしの後を追ってくる。
「ごめん…手、痛かった?」
思わず手を離すと、新垣 エリナは「ううん、大丈夫」と小さく頭を振ってあたしの隣に並ぶ。
すぐ近くに並んだ新垣 エリナ。
その白くて細い指先があたしの指に触れて、新垣 エリナはあたしの手をそっと握ってきた。
「ごめん…手…繋いでいい?なんか安心するの…」
消えそうな声で聞かれて、その指先が僅かに震えていることに気付いた。
あたしはその手を力強く握り返して、
「いいよ」
それだけ答えて、歩き出した。
―――
手を繋いだまま、どれぐらい歩いただろう。
目的のドラッグストアはもう越してしまっていて、宛てもなくただひたすらに駅の方を目指していた。
歩みを止めると、またあの男が追ってきそうで
少しだけ怖かった。
「りゅ、龍崎さん…あの人とのこと聞かないの?」
手を繋いでいた新垣 エリナがおずおずと話しかけてきて、あたしは目だけを上げた。
160cmぐらいであろう新垣 エリナを僅かに見上げる形になって
「ただのコーチと生徒だろ?」
あたしは無表情にそう聞いていた。
「え―――…?」
「コーチだろ?」
もう一度言うと、新垣 エリナは
「うん」
と、短く返してきた。
あたしは確信していた。
あの男がリコが言ってた男のことだ。
そしてあの男と新垣 エリナはやっぱり
何かしら関係がある―――と
それは直感だ。
嫌な直感。
あの男の手に
雪斗の手が重なったからだ―――



