「おめぇビールはいけるか?」
ユズさんにそう聞かれて、
「少しなら…」と言ってみた。ホントは大好きだけどな。
ユズさんにビールを注がれて俺はそれを一気飲み。
さっき水を飲み損ねたし。水分を喉に通してちょっと潤った。
グラスの中が一気に空になって
「いい呑みっぷりだな。少し程度じゃねぇだろ」
ユズさんが半分呆れたように白い目。
「まぁ俺も?未成年のときから飲んでたし、
ここのもんはお嬢を除いてみんな不真面目なヤツだから平気だけどよ」
「僕もこー見えて不真面目です。ビール以外だったら焼酎が好きです。しかも芋」
グラスにビールを注ぎいれるのも面倒になって俺は缶に直接口を付けた。
「芋焼酎とか…可愛い顔に似合わずおっさんだな。
てか、やさぐれてんなー。
お前マジでどうしたって言うんだよ。あんなお前見たのはじめてだぜ」
ユズさんは呆れたように苦笑いを浮かべながら、ちょっと考えるように首を捻った。
俺は空になった缶をグシャリと片手で握り潰して、
「ちょっと…言い合いになっちゃっただけです…さっきはすみませんでした…」
小さく答えて、すぐに次の缶のプルタブを開ける。
そのひしゃげた空き缶を見て、ユズさんがぎょっとしたように目を剥き、
「おめぇさっきも思ったケド結構な握力だな」と目をぱちぱち。
「その気になればリンゴも潰せますよ♪」
フっと口の端で笑うと、
「ここでは披露しないでくれ」
ユズさんは無理やり苦笑いを浮かべる。
ユズさんはグラスに注がれたビールに口を付けながら、
「キョウスケと痴話喧嘩か?
キョウスケがモデルみてぇな美女と浮気したのが原因だって壱さんが言ってたけどよー」
違います。
「あはは…~」俺は苦笑いで視線をあちこちに彷徨わせながらビールの缶に口を付けた。
「大方お嬢の取り合いで喧嘩にでもなったんだろ。
若いっていいね~
好きな女を巡って喧嘩とか、青春してんな」
ユズさんはさらりと言って
ブーーーー!!
飲んでたビールを思わず吹き出した。
「ぅわ!きったねぇ!」
ユズさんが慌てて飛びのいたが、俺はユズさんの言葉にもっと驚いている。
「いやっ!違っ!!」
慌てて口元を拭って否定するも、ユズさんは気にしてない様子。
「隠さなくてもいいって。おめぇら三角関係だろ?
お嬢はお前と付き合ってて、キョウスケはお嬢に片想いってとこか」
ユズさんは何でもないように言って指を折り曲げ宙を見やる。
あ、当たってる…だけに何も言い返せない。
てかすっげぇ…ドンピシャリだぜ。
ユズさんの黒魔術!?夢のお告げ!!?
「てかわけぇのが揃ってお嬢とか…俺はそっちの方がわからん」
ユズさんはう゛~んと首を捻り、難問を解いているかのような難しい顔。
俺は一番ユズさんが分かりませんが…



