しかし―――まぁ…本当のこと言えないから、俺が悪いっちゃ悪い。
全部言えれば楽なんだろうけど―――
でも
今は言えない…
テーブルに出しっぱなしだったケータイが青いランプを光らせている。
着信があったようだ。
ケータイを手にして開くと、
不在着信:新垣 エリナ
と表示が出ていて、俺は目を開いた。
今日ロッカールームで交換したんだ。
見なかったフリ、と言う意味でケータイを閉じたが、
やっぱり気になって折り返しの電話をした。
……が、相手が出ることはなかった。
着信は30分も前だし。他ごとでもやってるんだろう。
―――他ごと……
考えて、俺は盛大にため息をつき、ごろりと畳の上に横になる。
パジャマのズボンの中で紙がよじれる音がして、俺はごそごそとポケットの中をまさぐった。
出てきたのは、朔羅が書いたメモ―――
“夏フェア”の案だった。
ぐしゃぐしゃに丸められてロッカールームのゴミ箱に捨てられていた。
それを俺が拾ってきたわけ。
結局―――夏フェアの案は新垣 エリナの案が採用されるみたいだが、
一生懸命楽しそうに書いていた朔羅の顔を思い出すと、ズキっと心臓が……いや、こんなときでもリアルな胃の痛みを覚えて、
俺の体は正直だと気付いた。
「もったいないよな。せっかくここまで書いたってのに。
朔羅、あんなに悩んで一生懸命だったのに―――」
朔羅の可愛らしい字で説明書きが細かく添えられていて、
俺は少し微笑んだ。
あいつは―――いつだって一生懸命だ。
責任感が強くて、一度言われたことはどんな小さなことでも全力でやり抜く。
そうゆうヤツなんだ。
そうゆうとこも
好きなんだ―――
でも俺は、そんな朔羅を
裏切っている。



