。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。




しかし―――まぁ…本当のこと言えないから、俺が悪いっちゃ悪い。


全部言えれば楽なんだろうけど―――


でも


今は言えない…


テーブルに出しっぱなしだったケータイが青いランプを光らせている。


着信があったようだ。


ケータイを手にして開くと、


不在着信:新垣 エリナ


と表示が出ていて、俺は目を開いた。


今日ロッカールームで交換したんだ。


見なかったフリ、と言う意味でケータイを閉じたが、


やっぱり気になって折り返しの電話をした。


……が、相手が出ることはなかった。


着信は30分も前だし。他ごとでもやってるんだろう。






―――他ごと……






考えて、俺は盛大にため息をつき、ごろりと畳の上に横になる。


パジャマのズボンの中で紙がよじれる音がして、俺はごそごそとポケットの中をまさぐった。


出てきたのは、朔羅が書いたメモ―――




“夏フェア”の案だった。




ぐしゃぐしゃに丸められてロッカールームのゴミ箱に捨てられていた。


それを俺が拾ってきたわけ。


結局―――夏フェアの案は新垣 エリナの案が採用されるみたいだが、


一生懸命楽しそうに書いていた朔羅の顔を思い出すと、ズキっと心臓が……いや、こんなときでもリアルな胃の痛みを覚えて、


俺の体は正直だと気付いた。


「もったいないよな。せっかくここまで書いたってのに。


朔羅、あんなに悩んで一生懸命だったのに―――」


朔羅の可愛らしい字で説明書きが細かく添えられていて、


俺は少し微笑んだ。





あいつは―――いつだって一生懸命だ。


責任感が強くて、一度言われたことはどんな小さなことでも全力でやり抜く。




そうゆうヤツなんだ。



そうゆうとこも



好きなんだ―――





でも俺は、そんな朔羅を





裏切っている。