「しかし何故そんな話を急に?


まさかあの男…」


ぎゅっ!


キョウスケがわさびのチューブを力強く握って、


にゅ゛!


鮮やかな緑色をしたわさびがチューブから飛び出てきた。


キョウスケはわさびのチューブを握ったまま眉間に皺を寄せる。額に浮かんだ青筋が…


こ、怖ぇえよ。


「お、おめぇ出しすぎだ!


それに違うよ!戒は浮気するような男じゃないだろうし、まだ確認してないし!!」


あたしが慌てて言うとチューブを握ったままキョウスケがまたも無表情にあたしを見てきて、


あたしは意味もなくドキリとして思わず一歩後退。





「俺、別に戒さんのことだって言ってませんけど?」





は!


しまったぁ!!あたしとしたことがぁ!!


誘導尋問に引っかかったぁ!!!


てか単にバカなだけか…とほほ…


「戒さん……お嬢と言う人が居てはるのに浮気とか…ありえへん」


キョウスケは声を低めてわなわなと怒りを露にしてちょっと乱暴な手付きで皿の中のマヨネーズソースをまぜまぜ。


「あのガキャぁ。いてまうぞ!こらぁ!!」


キョウスケのブツブツ恐ろしすぎる独り言に、あたしは思わずそろりと後ずさり。


「お、おめぇガラ悪りぃよ」


そんなおっそろしいキョウスケから離れるように再び鍋の中のたまねぎに視線を落とし、


「でもまぁ、まだ決まったわけじゃないし…」





信じたい―――


ロッカールームで何もなかったと。



あの不自然なまでのぎこちない二人に、何もなかったと―――



信じ……




「れるかかよ!!ぜってぇなんかあったに違いねぇだろ!!」



キリさんや鴇田はああ言ったけど、


あたしがまだ子供だからか?





見るからに疑わしい二人を目の当たりにしちゃって、平常で居ろってのが無理な話なんだよ!!