。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。





「お嬢。キリが居る前でなんてことをおっしゃるんですか…」


と、さすがの鴇田も表情を歪めて聞いてくる。


「お前の心理を参考にしてみるつもりだ。参考になんないかもだけど」


「参考にならないですわよ。この人浮気するバイタリティーがあるのなら仕事してますから」


とキリさんが代わりに、にこにこ教えてくれる。


「この人、女を追い掛け回すより、数字を計算していた方が楽なんです。


複雑な乙女心を計算するより、お金の計算をする方が性分にあってるみたい♪」


…ああ。納得。


と言う白い目で鴇田を見ると


「随分失礼な言われようだな」と、鴇田は全然気にしていないように平然とコーヒーに口を付ける。


キリさんのこの態度に慣れていそうだ。


あいつは―――…戒は、女も大好きだが金も大好きだよな。


よくよく考えてみれば、危険過ぎる男だぜ。


「しかし私にはどうも浮気の類いには思えませんがね。


何か弱みを握られているとか」


う゛!


陰険蛇田め。鋭いな。


戒が新垣 エリナに正体バレたかも…ってことまでは言ってない。


てかさすがに言えない。そんなこと報告したらマッハで叔父貴に伝わるに違いねぇからな。


そうなったら雷どころじゃ済まねぇだろうしな。


「お前はどうして戒が浮気してないって思うんだよ」


同じオトコだからか??珍しく戒のこと庇いやがって。


ちょっとジリジリした思いで鴇田を睨むと、


鴇田はあたしの睨みにも動じず涼しい顔でタバコを口に含む。






「何故かって?極道の男だからですよ」






鴇田の答えはいたってシンプル。


口からも鼻からも煙を出しながら、「ふん」と感じで言い切った。