いっときは(強引に)立ち直ったものの、やっぱり戒のこと考えると悲しくなる。
あたし―――…
どうしたらいいんだろう。
言葉に出せない悲しみを、涙で流しながらあたしは思わずキリさんに抱きついていた。
――――
泣きながらわけを話せずにいるあたしに鴇田はひたすらに困りきって、
キリさんはわけも聞かずに、ただあたしを抱きしめ返して頭を撫でてくれた。
とりあえず落ち着くため、と言う意味でか
あたしは近くのカフェまで連れて行かれて、キリさんは温かいミルクティーを頼んでくれた。
その間にあたしは簡単にこれまでのいきさつを説明した。
「虎間のバカ倅が浮気を?」
事情をちょっと話すと、コーヒーのカップに口を付けながら、鴇田は声を低めて神経質そうな眉をぴくりと吊り上げた。
「…いや、まだ…浮気と決まったわけじゃ…」
「そうよ、翔。決め付けるのはまだ早いわ」
キリさんが腕を組んでちょっと鴇田を咎めるように睨む。
「てか戒のこと、バカとか言うな!あたしよりあいつは遥かに頭がいい」
「それはそうですね」
と鴇田はあっさり。
ぉい!鴇田ぁ!!傷心中のあたしの傷をさらにえぐるようなことすんな!
「…あ、あたしが勘ぐり過ぎなのかな…ちょっと態度がおかしかっただけで『浮気かも!』って騒ぎ立てて…」
「まぁ女の勘ってやつは当たりますからね」とコーヒーを飲みながらもまたも鴇田があっさり。
「ちょっと翔。もっと優しくできないの?」
とキリさんが咎めても、鴇田は相変わらずの涼しい表情。
「そうゆうお前はどうなんだよ。浮気を疑われたこと、一度もないんかよ」
言われっぱなしも癪に障るから、あたしは鴇田に反撃(?)に出た。
鴇田は飲んでいたコーヒーを危うく吹き出しそうになって盛大にむせた。



