「お待たせいたしました。アイスミルクティーのお客様…」新垣 エリナがグラスをテーブルに置きながら言いかけて、
「あ!新垣 エリナ!?」とキモ金髪が声を上げた。言って慌てて「マドンナ新垣さん」と言いなおしたが。
新垣 エリナはびっくりしたように固まって、そのグラスを持つ手が僅かにブレた。
それをうまくキャッチしたのはキョウスケ。
「大丈夫ですか」
と相変わらず無表情に答えるキョウスケ。
「あ、はい!すみません」新垣 エリナは慌ててグラスを持ち替えてテーブルに置いた。
「姐さん…じゃなくて、朔羅ちゃんとバイトしてたんだな~。さっきは気付かなかった。てかいつもより大人っぽい。
そっちもいいジャン♪」
キモ金髪は新垣 エリナに興味津々。
「マドンナ?知り合い?」とキョウスケがキモ金髪に聞くと、
「いや…知り合いってことも…可愛くて目立つし学校じゃ結構有名なんスよ。俺のツレも数人狙ってる…」とキモ金髪がキョウスケに説明しながらも
隣からリコの白い視線に慌てて目を逸らす。
男ってヤツぁ!
「おらよっ!アイスカフェオレだ!!」あたしはキモ金髪の前にドンとアイスカフェオレを置いた。
「新垣さんがマドンナだったら、お嬢はベラドンナですね」
とキョウスケがマイペースにぼそり…
「ベラ…ってかその何とかって何だよ」思わず目をきょときょとさせると、
くくっ
変態タイガが口元を押さえて吹きだした。
※ベラドンナはナス科の草です。非常に毒性が強い草です♪
タイガの反応からするとどうせ変なことに違いねぇ。
「ベラドンナはイタリア語で“美しい女性”って意味があるんだよ。うさぎちゃん♪
大丈夫、うさぎちゃんもキュートだよ☆食べちゃいたいぐらいに。
たとえおなかを壊しても」
タイガがまたもウィンクしてきて、あたしの背中にぞっと何かが走った。
てかおなか壊すって…やっぱ変な意味なんじゃん。
「朔羅を変な目で見ないでください!」リコが怒って立ち上がり、グラスを持っていた新垣 エリナがその勢いにびっくりしたのかふら付いた。
「きゃっ」
可愛い声をあげて体が傾き、
「危なっ!」あたしが支えるより早く
「大丈夫かよ」
いつの間に来たのか、
戒が新垣 エリナの腕を握り―――力強く支えた。



