昨日の夜に変な夢を見たせいだろうか。
タイムリー過ぎて、何だか怖くなった。
でも変態タイガに何か他意があるわけじゃなさそうだし…
「変態野郎、何しにきやがった」
戒は戦闘態勢でタイガを睨むと、あたしを庇うようにさっと前に出た。
「何ってうさぎちゃんのために売り上げ貢献さ~♪
ヒツジちゃん、その制服似合ってるね♪」
じゅる…
タイガが口元を手の甲で拭う素振りを見せて、戒は違った意味で顔を青くさせて後ずさった。
「そんな可愛いかっこで出迎えられたら、僕帰れないよ~♪
ね、ヒツジちゃんこのあと…」
他意は…こいつに限ってねぇな。いつも通りの変態ぷりだ。
「どこにも行かねぇよ。てか今すぐ帰れっ」
ケっと戒は吐き捨てて、それでも訝しそうにタイガを睨んでいる。
「な、なぁ戒。ホントにこいつのこれフリなんか?
お前の恋愛センサーぶっ壊れてんじゃねぇの?」
めちゃめちゃ本気そうだけど!めちゃめちゃお前狙われてるぞ!と言う意味で戒の袖を引っ張ると、
「俺にもわからなくなってきた。マジでセンサー壊れたかも」と戒は項垂れながらぼそり。
「うさぎちゃんも制服相変わらず可愛い~ね☆」
タイガの戯言を聞きながら、そろりと後ずさったキョウスケをタイガは見逃さなかった。
「Wow!ヒヨコちゃんまでぇ♪
オールスターだね」
タイガは一人楽しそうにカウンターの前をうろうろ。
「あたしも居るんですけど」
リコがタイガを睨むと、
「やぁ小悪魔ちゃん。君にもよく会うね」
バチバチっ!またもリコとタイガは空中で火花を散らして、いがみあっている。
てかリコをタイガから遠ざけなきゃ!
何せ最強の殺し屋の疑いのある男だからな。
最強の…
「ねぇうさぎちゃ~ん。今日終わったら暇?僕、またおいしそうなケーキ屋さん見つけたんだぁ。
うさぎちゃんもきっと気に入るよ~」
殺し屋??
思わず首を捻るほどこいつはいつも通り緊張感のない顔つきでへらへら。
「ヘンタイガ(変態タイガ)め!誰がてめぇと行くかっ」
「ヘンタイガ!?なんか略されてるし!」
タイガはさめざめと泣き真似。
「お客さん、メニューはいかがなさいますか?」
会話を締めくくるようにあたしの隣で戒が声を低めてタイガを睨んだ。
「じゃぁ今日のオススメコーヒーで♪
ホントはテイクアウトでうさぎちゃんとひつじちゃん、それでお土産にひよこちゃんをお持ち帰りしたかったけどー、一気に三人相手は僕も無理だしぃ」
テイクアウト!?
あたしと戒はぞぞっと背中を震わせていたが、そんなあたしたちを気にしないように
「ついでに君たちも頼んでいきたまえ。今日は僕のおごりだよ」
とウィンクをキョウスケに投げかけ、キョウスケはその目から飛び出た見えないハートを避けるようにさっと体をずらして、リコがまたも身震い。
「ちょっとぉ!変なビーム出さないでください!」
リコ…あんた何気にすげぇな…



