。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。




ロッカーの中にバッグを放り込んでいたあたしの手が思わず止まって新垣 エリナを凝視していると、


「あ…ごめんなさい……あたし…」


と新垣 エリナは顔を真っ赤にさせて慌てて手を振る。


そんな反応されたらこっちだって困る。


「…に、新垣さんてさ……




戒のこと―――好きなの?」






おずおずと聞いてみると、


「………」


新垣 エリナは益々顔を赤くして僅かに俯いた。


あ……あたし、女で良かった~…あたしが男だったら間違いなく抱きしめてるだろうな、


って感じの可愛い仕草。


いかん。危ない道に走ってしまいそうだ。


ってかあたし何悠長なこと考えてんだよ!


こんな!!堂々とライバル宣言されたも同然だろ!?


でも…





『戒に手を出すんじゃねぇ!ありゃあたしのオトコだ!!』





なんて


言えやしねぇ。


いかにも気が弱そうだし、か弱そうだし、言ったらぶっ倒れるだろうな。


でもこの何も知らなさそうなふわふわ美少女が不倫ねぇ…


いや、そうとは決まったワケじゃないけど。


指輪だって恋人同士ならつけるし。ペアリングかもしれねぇし。


でも…


あたしは左手薬指にリングはめてるけど、戒はしてないし。てかあいつがあんまりアクセしてるとこ見たことがない。


そもそもいい歳した大人が恋人とのペアリングを仕事着のときにはめるか??


結婚してりゃ別だけど、なんつぅか社会的マナー違反つうか。


やっぱ不倫か。


ああ…分かんねぇ。



ガクリ、と項垂れていると


「龍崎さん…」


またも新垣 エリナがあたしに問いかけてきて


「は、はい!」


あたしは反射的に背筋を正した。