戒が一晩中ついててくれたお陰かな。
あれから怖い夢を見ずに朝までぐっすり。
すっきりとした朝を迎えたも、やっぱりすぐ隣で眠るセクシィ過ぎる戒の寝顔は寝起きに刺激が強すぎる。
びっくりして飛び起きたのがつい一時間前。
隣で眠りこけていてる戒を置き去りしにして、
まだ目の裏で戒の寝顔の余韻が残る中、あたしはバイトに来た。
今日は一時間だけあたしの方が早い。
ホントは戒と同じ時間に同伴出勤(←使い方間違ってます)だったけど、
新しく入った新垣エリナに色々教えてやってくれ、っておネエ店長に頼まれたんだ。
あたしがノックをして控え室のロッカールームに入ると、
新垣 エリナはすでに制服姿で、ロッカーの扉にくっついている鏡の前でグロスを塗り塗り。
ちょっと濃い目のピンク色のグロスが形の良い唇にきれいにのっている。
「あ、おはよー…」
おずおずと声を掛けると、グロスを塗り終わった新垣 エリナが長い髪を手で束ねながら振り返った。
「おはよう、龍崎さん。ねぇこのグロスどう?変…じゃないかな…」
急に聞かれてあたしは戸惑った。
「き、きれいだと思うけど…」
正直、新垣 エリナとちゃんと話すのはこれがはじめてだから何を話していいのか分からん。
あたしは普段リコと何話してったっけ??テレビの話、流行の音楽の話、オシャレの話、あとは…
恋バナ―――とか……
どうしていいか分からずおどおどとしながらも、ブラウスのボタンを外した…
ところで思いとどまった。
いかん、いかん…あたしまで紋がバレちまうところだった。
私服だし、黒い色のブラウスだからキャミ着てこなかったんだよね。
早く制服に着替えたいあたしに気付かず、新垣 エリナはロッカーに背をもたれさせると
「龍崎くん、この色好きかなー…」とぽつり。
へ!?



