マサが部屋から出て行って、
「龍崎くんがね、『朔羅がびょーきだ!』って慌てて、あたしに電話をくれたの」とリコが切り出した。
そう言うこと……
戒、気を遣ってくれたんだな。
でも
「いや、病気じゃなくて……」
確かに精神的にキテるってのはちょっとあるケド。
「確かに顔色悪いよね。風邪でもひいた?病院いった?」
とリコが心配そうに覗き込んでくる。
あたしに必要なのは心と頭(特にこっちは重要!)の病院だ。
「や。風邪とかじゃなく変な病気でもなく、ただ単に生理痛が酷かっただけなんだよねぇ」
恥ずかしそうに頭を掻くと、
「あ~、そゆうこと。まぁ男の人は分かんないよね~」
と、リコが僅かに笑った。
「あたしも結構重い方だから、その辛さ分かるかも。でもさ、それ以外に朔羅、花火大会の日に何かあったんじゃない??」
リコが心配するような、それでいてどこか探るような上目遣いで聞いてきて、あたしは思わず俯いた。
リコ―――……気付いてたんだ……
だけど何があったかなんて、リコにも言えない。
そんな気持ちで俯いていると、
「や!言いたくなきゃいいんだけど!花火大会の日、朔羅様子が少しおかしかったように思えたから…」
リコが慌てて手を振る。
「龍崎くんと喧嘩でもしちゃった?でもさっきの様子から喧嘩してるようには思えなかったけど」
「…………」
またも黙り込んだあたしに、リコはそれ以上深く聞いてはこずアイスココアにおずおずと口を付けた。
狭い部屋に壁に取り付けた時計の秒針の音だけがやけに大きく響く。
気詰まりな沈黙が降りてきて、
「あ!そう言えば花火大会の日、朔羅金魚もらったらしいじゃん!♪あの金魚たちは元気??」
リコがわざと明るく言って、話を逸らした。



