「忠告おおきに。頭に入れておくワ」
響輔は大して興味がないのか、レポート用紙にペンを走らせている。
「もう!どうなったって知らないからねっ」
腕を組んでフンと顔を逸らすと、
「俺の親父の心配よりもあんた自分の心配した方がええで?」
「あら、あたしの心配?大丈夫よ、あんたが守ってくれるんでしょ?」
「どこをどう聞いてそうなんねん。
あんたと俺は敵同士や。俺かてそこまでお人よしやない」
響輔の眉がぴくりと動き、迷惑そうに目の端が釣りあがった。
「そう?だってこないだ危険を顧みずあたしに会いに来てくれたでしょ?」
すかさず被せるように言うと、響輔はまたも迷惑そうに目を伏せて小さく吐息をはいた。
「あれはあんたの為やなくて自分の為や。何やすっきりせぇへんで、気持ちわるかったから」
すっきりしない?気持ち悪い??
響輔はそう言うけど、そんなの理由になってないし。
それだけの為に命を落とすかもしれない危険な場所に一人で来るなんて、そんな簡単なことじゃない。
敵同士だと割り切るのなら、騙し合いだって攻撃の手だ。
玄蛇は響輔のことを『支配されるよりも支配したいタイプ』だと言ったけど、それはちょっと違う。
あたしには優しくないし、意地悪なことばっかり言うけど
でもそれは響輔の優しさ。
わざと遠ざけること言って、本当は
あたしのこと考えてくれてる。
「あんたも素直じゃないわね」
うふふ、とちょっと笑って響輔の肩にもたれかかると、
「何なん、その笑み。気持ち悪いねん」とまたも意地悪。
「ちょっとぉ!あたしが笑ったら喜ぶ男が世の中たくさん居るのよ!」
だけど素直になれないあたしはまたも喧嘩腰。
「はいはい。みんな目ぇ腐っとるんやないの?」
響輔はあたしの喚き声を軽く流してマイペースにレポートに向かっている。
意地悪でも、あたしの相手してくれなくても
でもやっぱり
好き。



