「イヤガラセじゃないわよ?あんたにサービスしにきたの♪」
あたしはコートを脱ぐと、響輔はぎょっと目を剥いた。
「…あんた…なんちゅー格好してんねん」
「そそられる?」あたしは谷間のある胸元を強調するように背を逸らすと、
「…別に。戒さんなら好きそうやけどな」とそっけなく言い、またもレポート用紙に向かう。
強がりじゃなく、本当に興味がなさそうだ。
その響輔の反応にちょっとム。
「何よ!せっかくサービスしたのに!」
「頼んでへん」
心底迷惑そうに表情を歪めて一言はっきりと言うと、
「俺大学のレポート書いてる最中なんや。頼むから静かにしてくれ」とため息。
それでも
「何よ。あんたにちょっと教えたいことがあって来たってのに。
あんたのパパのことよ?」
あたしが言うと響輔はちょっとだけ視線を険しくさせてふいに立ち上がった。
「な、何?」
あたしの動揺を無視して響輔は開いていた窓を閉めると、少しだけ外を気にするようにきょろきょろした後、きっちりとカーテンを閉めた。
明かりを灯していない部屋が一気に暗くなる。
ドキリ、として目をまばたくと座ったままのあたしの腕をとって響輔は真剣な顔で
「立って」と言い立ち上がらせた。
すぐ目の前に響輔が立ち、あたしの肩をそっと掴んだ。手付きは優しくていやらしさなんて微塵も感じなかったのに、
黒い目の底に険悪な光を湛えている。
ドキリ、として目をまばたいていると響輔は無言であたしの体に手を這わせた。



